医局に属して働いているとこんな悩みもあるのではないでしょうか。
この記事では、医師が医局を辞めた場合のメリットとデメリットについて紹介します。
医師のキャリアを考えるうえで、「医局に属する」か「医局を辞める」というのは大きな分岐点ですよね。
私は現在までに2つの医局に所属し、いずれも医局を辞めるという選択肢を選びました。
当初は、周りに医局を辞めた人もいなくて不安な気持ちもありました。
ですが今では、医局を辞めて本当に良かったと思っています。
2つの医局を辞めたことで感じる、医局のメリット・デメリットを改めて考えてみたいと思います。
特に医局を辞めようと決めた際に、どのような条件で転職先を探したらいいか参考になると思います。
医局を辞めようかどうか迷っている人の少しでも参考になれば幸いです。
目次
医局を辞める際に考えておくこと
医局を辞めたいなと感じるようになったら、医局を辞めた後、どのように医師として働きたいのかをしっかりと考えておきましょう。
- 開業をしたい
- 自分のペースで働ける病院で勤務したい
- 有給休暇はしっかり欲しい
- とにかく年収をアップさせたい
- 週4勤務で働きたい
- 当直はしたくない
- 残業はしたくない
- 家族との時間を大切にしたい
- プライベートの時間を大切にしたい
など、なんでもいいので紙に書き出してみましょう。
頭の中が整理してスッキリするのでオススメです。
そして、「医局を辞める!」と医局長や教授に切り出す前に、エムスリーやリクルートドクターズなどといった転職サイトで情報収集するのが良いです。
その方が、実際に辞めた後のキャリアプランが見通しやすいからです。
医局を辞める際には、「医局を辞めたら、医師としてのキャリアが台無しになる」、「なにかあっても医局に守ってもらえない」などと言われて医局に留まるように説得されることも多いです。
その際に、今後の見通しがある程度たっていれば、終始一貫して自分の意思を貫き通すことができます。
医局を辞めたメリット
とはいっても、医局を辞めて本当に大丈夫なのだろうか?と不安になりますよね。
私自身は、医局を辞めて本当に良かったと思っています。
医局を辞めたのは、医師10年目でした。
自分の専門領域の専門医資格はすべて取得して、専門分野の治療に関しては一通りできるようになっていたころでした。
医局を辞めて2年半ほど経ち、これまでに感じた医局を辞めたメリットは、
- 残業をしなくてよくなった
- 当直をしなくてよくなった
- オンコールがなくなった
- 土日病院に行くことはなくなった
- 年収が増えた
- 有給休暇を100%取得できるようになった
- 医局都合で病院を変わらなくてよくなった
などです。
医局にいると、ウソでしょ?と思われることもあるかもしれませんが、いまではこんな生活が普通になっています。
残業をしなくてよくなった
後期研修医の時は、病床数が700ほどで、3次救急まで対応している病院で勤務していました。
そもそも治療自体が18時に終わらないこともよくありましたし、19時からカンファレンスがあったり、カルテを書いたり学会発表準備などで、日付をまたいで仕事をすることも多々ありました。
現在、常勤先の勤務時間は8時30分~17時30分で、よっぽどの急変がない限りは残業はありません。
タイムカード制で、17時30~33分くらいにはタイムカードを押しています。
カンファレンスなどはこの勤務時間内に終わるようになっていますし、年に2,3回ほどしか残業をしていないと思います。
当直をしなくてよくなった
当直をしていると夜中に呼び出されたり、翌日眠たかったり、なにかとストレスになりますよね。
転職する際に、一番重視したことは、「当直はしない」ということでした。
勤務をしている地域が比較的都心部ということもあり、現在の勤務先には外部から当直バイトの先生が来てくれています。
そのため、常勤で当直をやっている先生はおらず、負い目を感じずに働くことが出来ています。
年末年始にだれが当直をするかといった、あみだくじやじゃんけんをする必要もありません。
オンコールがなくなった
私の勤務している病院は、一人主治医制の病院です。
ですが、時間外や当直帯などは、当直の先生などが対応してくれる体制となっています。
転職活動の際に、「オンコール体制はどうか」というのも重要な要素ですので、確認してみるとよいでしょう。
土日病院に行くことがなくなった
一人主治医制の病院だと、患者さんが発熱や急変した場合には、病棟から連絡がかかってくるのが普通です。
ですが、ここも、当直の先生が主治医の代わりとして責任をもって対応するという方針になっています。
もちろん、治療方針が定まっていなかったり、主治医に確認が必要な事柄に関しては電話はかかってきます。
ですが、病院に行って対応するということは余程のことがなければないです。
なので、休日も自分の趣味を楽しんだり、遠出や旅行なども心置きなくできるようになりました。
年収が増えた
医局を辞める際には大学院で研究を行いながら、医局からの紹介でバイトに行っていました。
大学病院からの給料は、週3コマ働いて、月に3~4万。バイトを合わせると月に70~80万ほど。
年収だと850万円ほどでした。
大学院の同期や上司は、土日に自分で見つけてきたバイトをして稼いでいましたが、私はそのころから自分の時間を大切にしたいと思っていたので、好きなことをして過ごしていました。
転職して、今は週4日は病院で常勤勤務、週1日はクリニックで非常勤勤務をしています。
病院からは年収1,600万円、クリニックからは年収450万円ほど頂いております。
2つ合わせると年収は2,050万円ほどです。
転職をすることで、+1,200万円(+240%)ほどになりました。
有給休暇を100%取得できるようになった
転職する時に確認しておいた方が良いことの一つが、「有給が取れるかどうか」「有給取得率はどれくらいか」が挙げられます。
なぜなら、医者として働いていくうちに、”有給なんて貰えるものではない”ということが知らぬ間に刷り込まれているからです。
実際に私も、転職の際には一切このことは確認せず、転職後にこの重要性に気づかされました。
労働基準法において、一定の要件を満たせば、年次有給休暇を付与することが義務付けられています。
現在の常勤先で一番ビックリしたことが、
医局秘書さんに、「ここの病院は有給取得率100%だから」と言われたことでした。
そのため、もちろん有給休暇は100%使わせてもらっています。
医局都合で病院を変わらなくてよくなった
医局に属しているといつ転勤になるかわかりません。
そのため家庭があれば単身赴任をせざるを得なかったり、その都度引っ越しをしないといけないですし、ライフプランが立てにくいです。
医局を辞めてしまえば、病院が閉院もしくは合併したりしない限りは、自分で病院を辞めてしまったり、条件が良い病院を探してきて転職をすることも可能です。
もちろん、相性が良ければ、ずっと同じ病院に居続けることも可能です。
今の職場の上司は、25年ほど同じ職場で勤務し続けているようです。
医局を辞めたデメリット
おそらく医局をやめたくても辞めることが出来ない多くの人が、”今までの医師としてのキャリアから外れることになる”ことを恐れているのではないでしょうか?
医局を辞めるデメリットは、
- 医局の関連病院で専門的な治療ができなくなる
- 医局の上司、同僚、後輩と疎遠になる
などでしょうか。
医局の関連病院で専門的な治療ができなくなる
私は医局を辞めるまでに、
- 専門分野の学会のパネルディスカッションなどで発表
- 専門分野の学会誌に症例報告
- 専門分野の英語雑誌にaccept
- 専門分野の治療に関しては上司からも意見を求められ、後輩も指導
などの経験もありました。
そして、医局を辞めると同時に、それまでの専門分野からは離れて、今は主にcommon diseaseの治療を行っています。
その際に強く思っていたことは、
・あと10年、20年無理なく続けていけるペースで医師として働いていこう
ということでした。
人生は一度きり。
若くして寝たきりになる人もいれば、いつ大病を患うかわかりません。
明日事故に遭って死んでしまう可能性だってあります。
そうであれば、平凡な日常を大切にして、毎日後悔のないように生活を送りたいと思いました。
また、あと10年、20年と同じ専門領域で治療を極めていきたいかというと、そうとも言えない自分がいました。
それよりは、common diseaseでもよいから、診察、検査、診断をすることで、医師としての専門性を活かしつつ、目の前にいる患者さんの役に少しでも立てればいいのではないかと思うようになりました。
医局の上司、同僚、後輩と疎遠になる
医局に属していれば、学会の地方会、勉強会などで、上司や同僚、後輩と顔を合わす機会も多いと思います。
知り合いが多ければ、他病院に患者さんを紹介する時もなにかと融通が利くことも多いでしょう。
しかし、本当に親しい上司や、同僚、後輩とでは医局を辞めたって関係は続くものです。
医局を辞めて関係が途切れるようであれば、それまでの関係だったのではないでしょうか?
本当に困ったときに頼れるような関係であれば、医局を辞めても付き合いが続くものです。
そして、医局を辞めて自分の時間ができるようになると、趣味やSNSなどを通じて別のネットワークができ、新たな人脈ができるようになってくる可能性もあります。
おわりに
医局を辞める際には、その後のキャリアプランをしっかりと考えておく必要があります。
医師免許は持っていると、まず転職で困ることはないでしょう。
なので、医局を辞めたとしても生活に困ることはありません。
私と同時期に数人が医局を辞めていますが、皆現在は充実した毎日を送っているようです。
自分と家族を大切にするためにも、医局をやめることも選択肢の一つとしてみてはいかがでしょう